6月22日(日)『オペラはいかが?~モーツァルト作曲 ドン・ジョバンニ~』
【出演】大山大輔 :(バリトン)ストーリーテラー&ドン・ジョバンニ
柴田紗貴子:(ソプラノ)ドンナ・アンナ、ドンナ・エルヴィーラ、ツェルリーナ
倍田大生 :(バリトン)レポレッロ、騎士長、マゼット
宇根美沙恵:ピアノ
6月22日(日)『オペラはいかが?~モーツァルト作曲 ドン・ジョバンニ~』を開催しました。
みなさん、「オペラ」と聞いてどんな印象をお持ちになりますか?
生の舞台を鑑賞するとなると少しハードルが高い…と思われている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、今までオペラの世界に足を踏み入れる機会がなかったという方にも、もともとオペラ大好きで何度も足を運んでいるという方にも、オペラの魅力をギュッと凝縮してお楽しみいただける公演をお届けしました。
演目は、モーツァルト作曲≪ドン・ジョバンニ≫。
≪ドン・ジョバンニ≫は、モーツァルトがイタリア人の台本作家ダ・ポンテと一緒に作った作品で、二人の前作である≪フィガロの結婚≫が当時大ヒットし、大衆の娯楽として人気を博しました。主人公が地獄に落ちる、という悲劇的な結末でありながら、華やかで軽快な旋律のアリアがたくさん盛り込まれた人気のオペラです。
大山大輔さんは、とんでもないプレイボーイ、ドン・ジョバンニと物語のナビゲートを。柴田紗貴子さんと倍田大生さんは、ひとりで3役(‼)担います。
通常のオペラで何十人ものオーケストラが奏でる音楽をピアノ一台で表現するピアニストは、宇根美沙恵さん。みなさんの多才ぶりに脱帽です。
ストーリーテラー大山さんの解説のあとにモーツァルトオペラの醍醐味、序曲の演奏が始まると舞台上はもう、スペインのセビリアです。
もめるドンナ・アンナ(柴田さん)とドン・ジョバンニ(大山さん)、迫力に満ちた騎士長(倍田さん)との対峙の場面
物語の展開は大山さんが解説、アリアはイタリア語で歌われます。
かつての恋人、ドンナ・エルヴィーラ(柴田さん2役)に言い寄ってしまったドン・ジョバンニ。彼女をまくため、従者レポレッロ役の倍田さんが、主人であるドン・ジョバンニがどれだけの女性をものにしてきたかをコミカルに歌い上げる<カタログの歌>を披露。どこか憎めない、人の好さが溢れ出るレポレッロを倍田さん、元彼の女性遍歴を聞かされるドンナ・エルヴィーラ、柴田さんの演技が光ります。
それでも懲りないドン・ジョバンニが次に目をつけたのは結婚式当日の可愛い花嫁、町娘のツェルリーナ(柴田さん3役)。「Andiamo(行きましょう)」とツェルリーナを連れ出そうとするドン・ジョバンニと、身分の高い貴族から<お手をどうぞ>と誘惑され揺れる乙女心を、はにかみつつも大胆に歌うツェルリーナの美しい二重唱でした。
残念ながらツェルリーナを手中に収めることはできず、思惑通りにことが進まずいら立つドン・ジョバンニは、高飛車な貴族のわがまま満載のとんでもないアリア、<シャンパンの歌>を歌い憂さ晴らしをします。
結婚式当日に花嫁を奪われそうになってお冠の花婿、マゼット(倍田さん2役)のご機嫌を取ろうと、あざと可愛いツェルリーナは<ぶってよマゼット>を歌い、無事に仲直りを果たします。
自分の欲望のままに騒動を巻き起こすドン・ジョバンニに業を煮やした登場人物たちが、ドン・ジョバンニを懲らしめようと探し始めます。
あろうことかドン・ジョバンニは、唯一の味方であるレポレッロを身代わりとして差し出し、自分は逃げおおせてしまうところで1幕は終了です。
2幕は、みんなからボコボコにされたレポレッロの堪忍袋の緒が切れるシーンから。
危険な目に遭い、もうあなたの従者はごめんです、おいとまを下さい!と憤るレポレッロをなだめすかし、あくまでも我が道を突き進むドン・ジョバンニ。
倍田さんはコミカルなレポレッロと重厚な騎士長(石像)とを見事に演じ分け、ここでは渋々ながらもドン・ジョバンニの言いなりになっている様子に、会場から笑いがこぼれます。
ドンナ・エルヴィーラをおびき出すためにレポレッロと服を交換し、レポレッロが気を引いている隙に侍女を誘い出そうと企てるドン・ジョバンニ。
そんなことはつゆ知らず、ドン・ジョバンニへの想いを「静まれ、私の心」と歌うドンナ・エルヴィーラ、柴田さん。凛とした強さと艶やかな歌声は、会場に静かな感動を残しました。
そんなエルヴィーラを横目に、セレナーデ<おいで窓辺に>をロマンティックに響かせるドン・ジョバンニ。
悪い男とわかっていても、抗えない…物語の登場人物を超えた魅力を振りまき、大山さんが聴かせてくれました。
自らの欲望のまま騒動を巻き起こすドン・ジョバンニの前に、亡くなった騎士長の石像が現れ、これまでの行いを悔い改めるよう諭します。
恐れおののくレポレッロを尻目に、「我が人生に一片の悔いなし!悔い改めることなどない」と石像を自らの館へ招待し、晩餐会を催すと豪語するドン・ジョバンニ。
晩餐会のシーンでは、モーツァルトの天賦の才は作曲能力だけではなく、敏腕マーケターでもあったという解説もありました。自身の前作≪フィガロの結婚≫の<もう飛ぶまいぞ、この蝶々>のメロディを盛り込み、劇中で「この曲めっちゃ流行ってるやつだ」と言わせたり、スポンサーであろうワインメーカーの宣伝を入れたりと、プロデュース能力も天才的だったそうです。オペラ観劇だけでは得られないこうした裏話を聞けるのも、本公演の大きな魅力のひとつです。
晩餐会に参加したエルヴィーラも、自らの愛を捧げ悔い改めるよう迫りますが、ドン・ジョバンニは意に介さず決して自分の行いを悔いようとしません。
誰の言葉も届かないドン・ジョバンニと、「悔い改めよ」と迫る倍田さん演じる騎士長の石像とのレチタティーヴォ(メロディを乗せた台詞)応酬のシーンでは、登場人物が乗り移ったかのような迫真の演技に、客席の緊張感も高まります。
結局ドン・ジョバンニは地獄へと落ち、残された登場人物で<これが悪党の最後だ>を歌い、めでたしめでたしのフィナーレを迎えますが、ここでもモーツァルトの才が光ります。
ならず者であったはずのドン・ジョバンニですが、彼亡きあとの世界を少しだけ、色あせた世界として描いてみせたそうです。ただの悪党討伐の物語に終わらせない、登場人物の魅力を最大限引き出すモーツァルトの傑作オペラは、こうして幕を閉じました。
さて、皆さまオペラはいかがでしたでしょうか。
この公演が、オペラに興味をもってくださるきっかけとなったらとても嬉しいです。
大好評だった本公演、ご来場くださった皆さ、本当にどうもありがとうございました!
Photo:©おおたこうじ
構成・演出:NPO法人 SEED OF ARTS 齊藤実雪
<アンケートより>※原文ママ
◇歌は良いなあと改めて思いました。解説付きの舞台も楽しいです。みなさんすばらしかったです。またほかの演目も待っております。
◇とても楽しかったです。ポイントを日本語にしたり、解説を混ぜたりすることで楽しいオペラがより楽しいものになっていました。ありがとうございました。
◇役のきりかわりがわかりやすくおもしろかったです。ピアノ素晴らしかったです。
◇こちらの大学のホールで芸術的な催しがあることを初めて知りました。オペラ初心者に優しい内容で楽しめました。演奏はもちろん軽妙なトーク・解説がすばらしかったです。近所なのでまた別のイベントにも参加したいです。ホールはこじんまりとした大きさですが、かえって演者との距離も近くて良かったです。声もよく響いていました。座席の前後もゆったりしていて良かったです。
桜美林芸術文化ホールでは、豊かな音響で本格的な演奏を堪能できるプロビデンスホール、演劇やパフォーマンスなどを楽しめるストーンズホールと、2つのホールでさまざまな芸術文化に触れるイベントを開催します。今後の開催にぜひご注目ください。
<チケット発売中の公演はコチラ>
◆ひなたやま映画上映会「百日紅(さるすべり)~ Miss HOKUSAI~」
7月26日(土)①11:00開演(10:00受付・開場)②14:00開演(13:00受付・開場)
会場:ストーンズホール
チケット:一般1,000円 高校生以下500円(未就学児入場不可)
◆「イエローヘルメッツ 『マクベス』ワーク・イン・プログレス公演」
8月3日(日) 14:00開演(13:30受付・開場)
会場:ストーンズホール
チケット:一般2,000円 学生(6歳から25歳)1,000円
<観覧無料のイベントも!>
◆復刻版浮世絵版画展 北斎 ひらこう!アートの世界
7/31(木)~8/29(金)※8/10~17は休館
会場:交流プラザ
料金:無料(予約不要)
★夏休みの宿題を応援!
7/31(木)~8/6(水)/ 8/18(月)~8/24(日)
9:10-10:00/16:00~16:50(各回50分程度)
展示を観て興味を持ったことから、宿題のテーマを担当学芸員と一緒に探してみましょう!
対象:小学生と同伴のご家族(大人)、お友達同士も可
申込:事前予約制
★桜美林大生によるロビーコンサート
8/4(月)14:00-14:20 / 8/26(火)11:30-12:00
料金:無料(予約不要)
◆今後のイベントスケジュール◆
詳細はこちらをご覧ください
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