公演レポート

4月12日(土)『こどものためのコンサート♪』『ひなたやまアフタヌーンコンサート』

4月12日(土)

「こどものためのコンサート」

「ひなたやま アフタヌーンコンサート」

ロシア出身のピアニスト、イリーナ・メジューエワさんによるコンサートを開催しました。

 

午前中は「こどものためのコンサート」として、冒頭にコンサートを支えてくれている調律師の佐々木一実さんから当館のピアノ、ベーゼンドルファーについて解説いただきました。創業は1828年、シューベルトが亡くなった年だそうで、量産しているピアノメーカーとしては最古とのこと。歴史を紡ぎ、コンサートの魅力を最大限高める調律のお仕事についての

興味深いお話のあと、イリーナさんの解説を挟みながらのコンサートが始まりました。

前半は、ショパンの作品の中から「幻想即興曲」「ノクターン嬰ハ短調(遺作)」「革命のエチュード」「小犬のワルツ」「マズルカ Op.7-1」の5曲を披露しました。即興曲、ノクターン、エチュード、ワルツ、マズルカなど、曲の成り立ちが異なる作品のそれぞれの特徴に加え、「音楽を聴くうえで大切なことは「静けさ」を聴くことです。音は静けさの中から生まれ、静けさの中へと消えていきます。その消えていく瞬間が素晴らしく美しい」と語り、穏やかで真摯に音楽と向き合うイリーナさんのお人柄にも心を掴まれました。

ピアノの詩人と呼ばれ美しく印象的な作品を数多く残したショパンのメロディが、生き生きとホールのすみずみにまで染み渡る素晴らしい演奏に皆さん聴き入っていました。

後半は、旅行さながらにヨーロッパを味わえるプログラムでした。「ユーモレスク」(ドヴォルザーク)、「ルーマニア民俗舞曲」(バルトーク)、「レントラー集」(シューベルト)、「小さなワルツ」(プッチーニ)、「水の戯れ」(ラヴェル)と、各国の作曲家の特徴や歴史背景などにも触れ、観客の皆さんをヨーロッパへと誘います。それぞれの国を訪れたような没入感を感じさせる圧巻の演奏に、子どもたちも身を乗り出し集中してピアノの生音と迫力を堪能したようです。

<アンケートより>※原文ママ

・素晴らしい演奏と作曲家の説明・曲の説明が簡潔でわかりやすくとても良い時間を過ごせました。音は静寂から生まれるというお話も印象深かったです。

・自分の練習していた曲がでてきたのでうれしかったです。(小犬のワルツ)

・調律の方や、イリーナさんのお話もありピアノのこと、作曲家のことがわかりやすく伝わりました。演奏も、とてもメロディがはっきりと伝わり美しく透明感のある音色で様々な音の世界を楽しく聞かせていただきました。

 

午後のコンサートでは少し趣を変え、作曲家をより深堀りし、イリーナさんと作曲家が作り上げる音楽の世界を楽しむコンサートをお届けしました。

ショパンの作品の中でもひときわ存在感を放つノクターンの作品から、「ノクターン 変ロ短調 Op.9-1」を甘くたおやかな音色で、次の「スケルツォ 第2番 変ロ短調 Op.31」では、それまでの穏やかさとは一変、ショパンへの敬愛が込められた力強い演奏で会場を魅了しました。続いてエチュードの中から「変イ長調 Op.25-1」、「ヘ短調Op.25-2」、「ホ長調Op.10-3〈別れの曲〉」、「ハ短調 Op.10-12〈革命〉」の4曲を。練習曲として作曲されたエチュードですが、当時の作曲家はこぞって指の練習、という目的にとどまらず自らの芸術性を作品に反映させたといいます。ショパンの作品が今日でも広く愛されているのは、技巧のみではなくその美しさまでをも表現しようと研鑽を積まれてきたピアニストの方々のたゆまぬ努力があってこそと、ピアニストとショパンの関係性を垣間見ることができたような気持ちになる演奏でした。

 

その後も「ノクターン 変ホ長調Op.9-2」「スケルツォ第3番 嬰ハ短調Op.39」とショパンの世界を堪能した後は、フランスの奇才、ラヴェルの作品「亡き王女のためのパヴァーヌ」「シャブリエ風に・ボロディン風に」「水の戯れ」と続きます。

時計職人のよう、と評されたラヴェルの緻密な音楽。風の音や水のきらめきのような瑞々しさを帯びたイリーナさんの演奏が会場を包み込み、演奏終了の静けさの余韻に浸ったのちは、観客のみなさまからの鳴りやまない拍手にアンコール「小犬のワルツ」でお応えし、軽やかな高揚感をのこして午後のひと時の演奏会を締めくくりました。

午前、午後ともにイリーナさんのサイン会も行われ、子どもたちにも笑顔で応えてくれたイリーナ・メジューエワさん。

演奏はもちろんのこと、春の陽ざしのようなあたたかなお人柄に触れ、すっかりイリーナさんの虜になったコンサートでした。

 

<アンケートより>※原文ママ

・大好きなショパンの名曲をたくさん聴くことができて、とても感動しました。

イリーナさんの日本語がとても上手で解説も良かったです。休日の午後の本当に良いひとときでした。ありがとうございました。

・大変楽しい時間でした。ピアノは弾けませんが、音を聴くことを楽しみに参加しましたが、親しみやすいコンサートでした。イリーナさんの解説がよかったです。説明のプリントもありがとうございました。

来月5月11日は、大学・大学院を卒業したてのフレッシュな才能が集う、「まちだフレッシュコンサート2025」を開催します。

6月には気軽に楽しめるオペラ「オペラはいかが?~モーツァルト 『ドン・ジョバンニ』 大山大輔編~」の公演もございます。

 

桜美林芸術文化ホールでは、豊かな音響で本格的な演奏を堪能できるプロビデンスホール、演劇やパフォーマンスなどを楽しめるストーンズホールと、2つのホールでさまざまな芸術文化に触れる事業を開催します。今後の開催にぜひご注目ください。

 

◆「まちだフレッシュコンサート2025」

5月11日(日) 14:00開演(13:00 受付・開場)

会場:プロビデンスホール

チケット:入場無料/全席自由(要事前予約)

 

◆「オペラはいかが?~モーツァルト 『ドン・ジョバンニ』 大山大輔編~」

6月22日(日) 14:00開演(13:00受付・開場)

会場:プロビデンスホール

チケット:一般2,000円 学生(6歳から25歳)1,000円

 

詳細はこちらをご覧ください

 

Photo: ©おおた こうじ

 

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